2019年1月17日~18日にシンガポールで開催された22nd East Asian Forum of Nursing Scholars(EAFONS)において、プロジェクトの成果を2演題、発表しました。
今後高齢化が進むアジア諸国の看護研究者が、プロジェクトの活動に関心をもってくださいました。
【発表の要旨】
Kugai H, Igarashi A, Takaoka M, Suzuki M, Matsumoto H, Aoki S, Miyahara M, Yamamoto-Mitani N.
“Characteristics of Convenience Store Managers Interested in Supporting Community-Dwelling Older Adults”
「地域高齢者の支援に対する関心の高いコンビニエンスストア責任者の特性」
目的:地域において高齢者への支援に関心の高いコンビニエンスストア(コンビニ)の特性を明らかにすること。
方法:2017年12月、東京都内の3自治体のコンビニ店舗(n = 543)に対し、コンビニ店舗および責任者の属性、「認知症に対する態度」「地域社会への意識」尺度について質問紙調査を行い、コンビニ店舗および責任者の特性と「認知症に対する態度」「地域社会への意識」との関連を検討した。
結果:コンビニ責任者97名が質問紙に回答した(回答率= 17.9%)。対象者の平均年齢は47.1歳で、78.1%が男性だった。従業員におけるフリーターの割合および外国人の割合が低いこと、高齢者を保護した経験があること、地域包括支援センターの連絡先を知っていることが認知症に対する態度が肯定的であることに関連していた。地域ネットワークへ参加していることおよび宅配サービスを行っていることが「地域社会への意識」が高いことと関連していた。コンビニ責任者が地域包括支援センターの機能を知っていることは、コンビニが地域高齢者の生活を支えているという認識に関連していた。
結論:高齢者を支援した経験や地域ネットワークへの参加、地域包括支援センターについての知識がコンビニ責任者の高齢者支援への関心を高め、高齢者にやさしいコンビニづくりの推進につながる可能性が示唆された。
Dw. Sari, Igarashi A, Takaoka M, Murata S, Yanase N, Shimogawara T, Miyahara M, Yamamoto-Mitani N.
“An Educational Program to Develop Dementia-Friendly Communities in Japan”
「日本における『認知症にやさしい地域社会』を構築するための教育プログラム」
目的:「認知症にやさしい地域社会」を推進するための教育プログラムが地域住民の意識や態度に与える影響について検討すること。
方法:2018年3月、首都圏の2つのコンビニエンスストアの駐車場において、認知症をもつ人々の世界を体験するバーチャルリアリティ(VR)を用いた教育プログラムを実施した。プログラム実施の前後に「認知症に対する態度」と「地域社会への意識」を問う質問紙調査を実施し、プログラム実施後の態度・意識の変化を検討した。
結果:参加者は42名で平均年齢は47.7歳だった。「認知症に対する態度」と「地域社会への意識」の合計得点は、介入前から介入後へと積極的に変化した(p = 0.011, p = 0.039)。「認知症に対する態度」の下位尺度である「拒否」および「親近感」の得点が有意に改善した(p = 0.010, p = 0.040)。また「地域社会への意識」の下位尺度である「連帯・積極性」と「他者依存」の得点が有意に改善した(p = 0.003, p = 0.023)。
結論:本研究で開発された教育プログラムは、地域高齢者への支援に対する人々の認識を高め、「認知症にやさしい地域社会」の促進につながる可能性がある。