論文

★プロジェクトの関連論文が海外学術誌に掲載されました★

プロジェクトに関連してプロジェクトメンバーらが実施した研究の論文が、Health Policy誌に掲載されました。コンビニチェーンと市区町村が高齢者見守り協定を締結すると、コンビニ店舗における高齢者支援活動が推進されることを示した論文です。

【掲載論文】

Nakamura Y, Matsumoto H, Yamamoto-Mitani N, Suzuki M, Igarashi A. Impact of support agreement between municipalities and convenience store chain companies on store staff’s support activities for older adults. Health Policy. 2018 Sep 28. pii: S0168-8510(18)30528-1. doi: 10.1016/j.healthpol.2018.09.015.

https://doi.org/10.1016/j.healthpol.2018.09.015

【研究の要旨】

高齢化が進む日本では,民間企業が高齢者支援に一定の役割を果たすことが期待されている。民間企業に高齢者支援に参加してもらうための行政施策の一案として,市区町村と民間企業とが高齢者の見守りに関する連携協定を締結することを厚生労働省が提案し,一部ではすでに実施されている。本研究の目的は,連携協定の締結によりコンビニエンスストアにおける高齢者支援活動が促されたのかどうかを評価することである。本研究は後ろ向き観察研究であり,全国のコンビニエンスストアを対象とした調査データ (2013年・2016年実施) を用いて実施された。分析では,まず市区町村レベルのマッチングを行い,2014年から2015年までの期間に連携協定を締結した市区町村と締結しなかった市区町村を,168ペア選定した。各々に属するコンビニエンスストア店舗は,それぞれ2242店舗,2141店舗であった。次に,コンビニエンスストア店舗レベルのロジスティック回帰分析を行い,連携協定の締結と高齢者支援活動の実施との関連を明らかにした。回帰分析により,連携協定を締結した群では,次の3つの高齢者支援活動の実施が有意に増加した。―「地域包括支援センターと協力した経験」(【調整済みオッズ比(AOR)】:3.40,【95%信頼区間(CI)】:2.22 – 5.26),「高齢者保護活動訓練に参加した経験」(【AOR】:2.05, 【95%CI】:1.01 – 4.26),「認知症サポーター養成講座に参加した経験」(【AOR】:18.21,【95%CI】:8.27 – 45.34)。本研究の結果から,連携協定の締結により,コンビニエンスストアにおける高齢者支援活動が促される可能性があることが示唆された。

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★プロジェクトによる論文が学術誌に掲載されました★

プロジェクトにおいて、支援や介護を必要とする地域高齢者が生活の中でどのようにコンビニエンスストアを利用しているかについて調査した論文が「老年社会科学」(http://www.rounenshakai.org/)に掲載されました。

この論文は、第59回日本老年社会科学会大会(2017)でポスター発表した内容に基づいてまとめたものです。

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訪問介護サービスを利用する高齢者のコンビニエンスストア利用の実態―コンビニエンスストアが生活支援の役割を果たしている事例に関する質問紙調査―

五十嵐歩、松本博成、鈴木美穂、濵田貴之、青木伸吾、油山敬子、村田聡、鈴木守、安井英人、山本則子

老年社会科学 2018. Vol.40-3 p.283-291

【要旨】

本研究は、訪問介護を利用する在宅高齢者におけるコンビニ利用の実態を把握することを目的とした。東京都A区において調査協力への同意が得られた訪問介護事業所および小規模多機能型居宅介護事業所の管理者(n=28)を対象とし、コンビニが生活支援の役割を果たしている利用者の事例に関して、利用者特性やコンビニの利用状況を問う質問紙への回答を依頼した。対象事業所より64事例について回答があった。事例の利用者は、平均年齢77.6±11.4歳、男性30名(47%)であり、要介護1(31%)と要介護2(30%)が多かった。一人で来店する者が68%であり、徒歩での来店が75%を占め、購入品は弁当・パン・惣菜が最も多かった(91%)。ADL障害のある者はない者と比較して、サービス提供者の同行が多く(p=0.001)、車椅子等徒歩以外の来店割合が高かった(p=0.018)。サービス提供者は、日中一人で過ごす者(p=0.064)とADL障害がある者(p=0.013)に対して、コンビニの存在をより重要と評価していた。

プロジェクトに関連する論文が国際誌に掲載されました

コンビニエンスストアにおける認知症サポーター養成講座の受講がその後の地域包括支援センターとの連携につながることを検討した論文が、Geriatrics & Gerontology International誌に掲載されました。

【掲載論文】Matsumoto H, Igarashi A, Suzuki M, Yamamoto-Mitani N. Dementia education is the first step for cooperation: An observational study of the cooperation between convenience stores and community general support centers. Geriatr Gerontol Int. 2020 Aug 7. doi: 10.1111/ggi.14000.(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/ggi.14000

【研究の要旨】目的:認知症サポーター養成講座は認知症の啓発を目的として,主に地域包括支援センターによって実施されている.コンビニエンスストアは日本全国に普及しており、高齢者の日常生活に重要な役割を果たしている.そこで,本研究ではコンビニ店舗の認知症サポーター養成講座の受講が、店舗と地域包括支援センターの連携を促進するかを調査した.方法:全国調査のデータを用いて,縦断的観察研究を行った.各店舗に「認知症サポーター養成講座の受講」と「地域包括支援センターとの連携」の有無を尋ねた.2016年に養成講座を受講した店舗(受講群)と受講しなかった店舗(非受講群)とで,2017年と2018年の包括との連携の割合を比較した。結果:2016年に,14,884店舗中542店舗が受講した.地域包括支援センターと連携した店舗の割合は,受講群では8.1%(2017年)と7.2%(2018年)であったが、非受講群では3.2%(2017年),4.0%(2018年)であった.結論:認知症サポーター養成講座は,コンビニと地域包括支援センターが連携して高齢者支援を進めるためのきっかけになる.

コンビニ店舗でのイベントで実施したN-impro、認知症VRプログラムの効果に関する論文が海外学術誌に掲載されました

コンビニ店舗においてN-impro、VRプログラムを実施した効果を評価した論文が、Australasian Journal on Ageing誌に掲載されました。このイベントは、地域おこしプロジェクト中で2018年3月22日に開催されました。「研究の要旨」では述べていませんが、VR教育プログラムとN-improを両方体験した参加者の方では、認知症への態度やコミュニティ意識の改善により大きな効果が見られました。現在、この取り組みを発展させ、VRを活用した認知症に対する意識を高める教育プログラムを開発中です。

【掲載論文】Sari DW, Igarashi A, Takaoka M, Yamahana R, Noguchi-Watanabe M, Teramoto C, Yamamoto-Mitani N. Virtual reality program to develop dementia-friendly communities in Japan. Australasian Journal on Ageing. Australas J Ageing. 2020 Jun 2. doi: 10.1111/ajag.12797.

(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/ajag.12797)

【研究の要旨】目的:認知症にやさしい地域は、地域のまとまりを強め、地域におけるエイジズム(年齢に対する偏見)を軽減する。この研究では、認知症バーチャルリアリティ(VR)教育プログラムの実施により、認知症に対する態度や地域の高齢者への支援に関する「コミュニティ意識」へ及ぼす効果を検討することを目的とした。方法:首都圏の2つのコンビニエンスストアの駐車場で、認知症のある方の一人称体験を提供するVR教育プログラムを実施した。教育プログラムの前後に、認知症に対する態度と参加者のコミュニティ意識を調査した。結果:研究参加者は42人だった(平均年齢= 48歳)。教育プログラムの前後で、認知症に対する態度とコミュニティ意識の合計得点が改善した(p = .004、p <.001)。結論:認知症への理解を促す教育プログラムにより、認知症のある方に対する地域住民の支援を強化できる可能性がある。

N-improの開発プロセスと効果を検討した論文が、Journal of Applied Gerontology誌に掲載

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